国産小麦を使った商品も増え、小麦粉そのものも購入することができるようになりました。新しい品種が開発され、ブランド小麦といわれるものが登場しています。国産小麦は安全というイメージがありますが、具体的に何が違うのでしょうか。また国内で栽培されている小麦の品種について、生産地、特徴、用途についても紹介します。
小麦の自給率は 16 %
最近、国産小麦使用、国内産小麦粉使用と書かれたパンやめん類が増えてきました。ちょっと高くても、安全でおいしいものを求める消費者のニーズにあわせた動きです。ところで、国産小麦って、そんなにたくさんあるのでしょうか。令和 7 年度の小麦の自給率は 16 %です 1)。
ところで小麦を使った食品の原材料欄を見ると、ほとんど、小麦粉(国内製造)と書かれています。実はこれ、紛らわしい表現です。日本で販売されている小麦粉は、一部を除いて、日本国内で製粉されています。輸入した小麦を国内で製粉した小麦粉は、小麦粉(国内製造)になります。国産小麦を使っている場合は、国産小麦使用と別に書かれてることが多いです。
国産小麦の小麦粉(強力粉)は、輸入小麦の小麦粉の 1.5~2 倍くらいの値段で販売されています。国産小麦の小麦粉は、小麦の品種や産地が指定されていたり、有機栽培されたものが多いので、単純には比較できませんが、割高であることは間違いありません。
国産小麦の安全性
グリホサートは不使用
輸入小麦は、安定供給を目的として日本政府が国家貿易として一括で買い付け、国内の製粉会社に売り渡す仕組みとなっています。そのため農薬については、輸入された際に残留している数値が基準値を上回っているか、下回っているかで判断されます。
輸入小麦でまず問題となるのは、グリホサートという農薬です。グリホサートは世界中で使われている「除草剤」で、植物を枯らす目的で使われます。収穫の 1 週間ほど前に小麦畑にグリホサートを散布して小麦を枯らし、枯れた小麦を刈り取ることで、乾燥した小麦粒を効率よく収穫するのです。残留基準は 30 ppmです。グリホサートは日本でも農薬として使われていますが、小麦への使用は認められていません(大豆への使用は認められています)ので、国産小麦からグリホサートが検出されることはありません。
グリホサートについては、こちらの記事もお読みください。
小麦や大豆の収穫前に使われるグリホサートという農薬。日本では除草剤として使われています。輸入小麦や食パンから検出されており、その問題点を指摘する声は根強くあります。発がん性や遺伝毒性はないといわれていますが、腸内細菌への影響を指摘する研究結[…]
ポストハーベスト農薬は不使用
ポストハーベスト農薬とは、
- 農産物の品質の低下を防ぐ。
- 農産物の虫による捕食や腐敗による廃棄を減らし、農産物を安価に供給する。
- 輸送・保管中に発生したカビなどによる食中毒を防止する。
目的で収穫後に用いられるもので、法律上は農薬ではなく、食品添加物の扱いになります。日本国内では原則として使用が禁止されているので、国産小麦からは検出されることはありません。
小麦に使用されるのは「防虫剤」です。ネット上には「防カビ剤」が使われているという情報がありますが、防カビ剤は小麦には使われていません。輸入小麦は収穫されてから製粉されるまで、長い時間貯蔵されることになります。この間に虫によって食べられるのを防ぐ目的で、下記のような化学物質が使われます。主要なものだけを紹介します。なお残留基準値は残留農薬基準値検索システム 2)によるものです。
- マラチオン(商品名:マラソン) / 有機リン・有機硫黄系殺虫剤 / 残留基準値 8 ppm
- ピペロニルブトキシド / 殺虫剤 / 残留基準値 24 ppm
- ピレトリン / 殺虫剤(蚊取り線香の殺虫成分と同じ化学物質) / 残留基準値 3 ppm
- リン化アルミニウム、リン化マグネシウム / 殺虫剤(燻蒸剤) / 残留基準値 0.1 ppm
- ジクロルボス(DDVP) / 殺虫剤 / 残留基準値 0.2 ppm
遺伝子組み換えではない
現在、商業栽培されている遺伝子組み換え小麦は存在しません。ただ海外には、研究用に作られた遺伝子組み換え小麦が存在します。2019 年に未承認の遺伝子組み換え小麦がアメリカ・ワシントン州で発見されたことを、アメリカ農務省が発表しました。これは先ほど紹介した農薬グリホサートに耐性を持つ遺伝子を組み込んだものです。つまり除草剤であるグリホサートで枯れない小麦ということになります。これに対して、アメリカの食品医薬品局(FDA)は、
- 遺伝子組み換え小麦は、アメリカ国内で商業栽培、商業流通、販売されていない。
- ごく少量が食品に混入したとしても安全上の懸念はない。
と公式発表しています。
また農林水産省では輸入小麦をロットごとに遺伝子検査(PCR検査)しているため、輸入小麦として国内で流通する可能性は極めて低いと考えられます。
国産小麦の価格が高い理由
国産小麦の値段が高い理由はいろいろ考えられます。まずは生産コストの違いです。外国では広い圃場を使い、人手をかけずに栽培しているため、生産コストは圧倒的に安いです。
つぎに海外から輸入されている小麦の品種は、以下に示すたった 5 品種しかありません(( )内は略称)。製粉業者はこれをブレンドすることで、用途にあった小麦粉を製造しています。
- カナダ産ウェスタン・レッド・スプリング(1CW)
- アメリカ産ダーク・ノーザン・スプリング(DNS)
- アメリカ産ハード・レッド・ウィンター(HRW)
- オーストラリア産スタンダ-ド・ホワイト(ASW)
- アメリカ産ウェスタン・ホワイト(WW)
これに対し、日本で栽培・流通している小麦の品種はなんと 67 もあります(2021年現在)。67 種類の小麦をそれぞれ栽培し、製粉して流通させるためには、手間もコストもかかります。
日本の小麦は、道府県の農業試験場が独自に品種改良した小麦を、道府県内だけで栽培し、ブランド化することで高く販売しようとしています。日本では高くても売れるものを目指しているので、これでは国産小麦の値段が下がるはずがありません。安くて、ある程度の品質を求めるという、消費者のニーズとかけ離れているといわざるを得ません。
国産小麦の品種
国内で栽培される小麦は 67 品種あります。まずは生産量が比較的多いものをまとめて紹介します。
ところで国産小麦の60%以上は、北海道で生産されています。本州では、秋に種をまいて梅雨の前に収穫する、いわゆる秋播き小麦だけしか栽培されていませんが、また気温が冷涼で梅雨のない北海道では、春に種を播いて秋に収穫するという、春播き小麦も栽培されています。ただ、比率は秋播きの方が圧倒的に多いです。
また北海道で栽培されている品種は、北海道特有の品種です。そこで品種を紹介する際に、①北海道産、②本州産、③ご当地小麦に分けることにしました。
ご当地小麦というのは、このサイトで勝手に付けた名前ですが、県が品種を開発し、その県内だけで栽培されている品種です。みなさんも一度は耳にした品種があるのではないかと思います。
| 北海道産 | |||
|---|---|---|---|
| 秋播き | きたほなみ | 中力粉(うどん、お菓子用) | 2014年生産量1位 |
| ゆめちから | 強力粉(パン・中華めんブレンド用) | 2014年生産量2位 | |
| キタノカオリ | 強力粉(パン、中華めん用) | 旧品種で生産量少ない | |
| 春播き | 春よ恋 | 強力粉(パン用) | 2014年生産量4位 |
| ハルユタカ | 強力粉(パン用) | 旧品種で生産量少ない | |
| はるきらり | 強力粉(パン用) | 新品種で生産量少ない | |
| 本州産 | |||
|---|---|---|---|
| 秋播き | さとのそら | 中力粉(日本めん用) | 2014年生産量3位 |
| シロガネコムギ | 中力粉(製菓用) | 2014年生産量5位 | |
| チクゴイズミ | 強力粉(中華めん、日本めん用) | 2014年生産量6位 | |
| ミナミノカオリ | 強力粉(パン用) | 2014年生産量8位 | |
| イワイノダイチ | 中力粉~薄力粉(製めん、製菓用) | 2014年生産量9位 | |
| あやひかり | 薄力粉(製めん、製菓用) | 2014年生産量10位 | |
| ご当地小麦 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 秋播き | 香川県 | さぬきの夢2009 | 中力粉(うどん用) | 2014年最も高値で落札された |
| 福岡県 | ラー麦 | 強力粉(中華めん用) | 中華めん用に開発された品種 | |
| 愛知県 | きぬあかり | 中力粉(製めん用) | 製めん用に開発された品種 | |
パンを作るのに適した品種
パン作りには、グルテンを多く含む強力粉が適しています。近年、パンの人気が高まっていることから、強力粉用の小麦の生産が増えています。
品種名の前の●は秋播きを、■は春播きを示します。
● ゆめちから
概要
北海道で栽培される秋播き小麦です。粉はふつうの強力粉より粘りが強い超強力粉で、製パンに適しています。またほかの粉とブレンドすることで、中華めんやパスタにも使われます。強力粉用の小麦の中では、生産量はトップです。
用途
そのまま製パン用に使われるほか、「きたほなみ」などの中力小麦粉とブレンドすることにより、その生地の弱さが改善され、パン用に使えるようになります。またほかの粉とブレンドして作った中華めんは、弾力・硬さなどの食感がよいといわれています。たんぱく質を多く含むため、パスタ用やしょうゆの原料としても利用できます。
由来
「札系159号」という早生・耐雪種と、「KS831957」というアメリカの品種との交配種と、北海道で栽培されていた「キタノカオリ」を交配させることで生まれた品種です。農研機構北海道農業研究センターが開発し、2011年に品種登録されました。「キタノカオリ」の後継品種です。
品種の特性
- たんぱく質が14%と多い。
- コムギ縞萎縮病に強い。
- 稈長はやや短く、穂長はやや長い。倒伏の発生は少ない。
- 60%粉の粗蛋白質含量は高く、灰分含量はやや高い。小麦粉の明るさ、黄色みはほぼ同程度である。
製パン特性
- ふくらみ:2
- モチモチ感:3
- 香り:1
■ 春よ恋
概要
北海道で栽培される春播き小麦です、春播き小麦は秋播き小麦に比べて生産量が少ないです。粉は強力粉で、パン、めん類に適しており、もちもちと軟らかい食感が特徴です。製パン用の小麦としては、「ゆめちから」に次ぐ生産量となっています。
用途
製パン用の強力粉として用いられるほか、他の小麦粉とブレンドした粉が製パン用に使われます。2017年のパン用国産小麦の35%を占めています。
交配
多収の「ハルユタカ」を母、アメリカのパン用品種で良質性と耐病性に優れた「Stoa」を父としてホクレン農業総合研究所が交配し、1997年に品種登録を行いました。
品種の特性
- 「ハルユタカ」と比べて雨や病気(うどんこ病、赤さび病、赤かび病)に強く、収穫量が多い。また製パン特性に優れる。
- たんぱく質の含量は11.8%、灰分の含量は0.45%。
製パン特性
- ふくらみ:3
- モチモチ感:3
- 香り:1
● キタノカオリ (入手困難)
概要
北海道で栽培される秋播き小麦です。粉は強力粉で、製パンに適しています。パン用の小麦として根強い人気がありますが、「ゆめちから」の生産拡大とともに生産量が減る傾向にあり、入手が困難になりつつあります。
用途
強力粉として製パン用に使われます。
由来
北海道品種「ホロシリコムギ」とハンガリー品種「GK-Szemes」を農研機構北海道農業研究センターが交配して誕生し、2003年に品種登録されました。現在、強力粉用小麦として生産量が最も多い「ゆめちから」の祖先になります。
品種特性
病気(赤さび病、うどんこ病)に強く、倒れにくい。
製パン特性
- ふくらみ:3
- モチモチ感:2
- 香り:2
● ミナミノカオリ
概要
主に九州で栽培される秋まき小麦です。粉は強力粉で製パンに向いています。パン用の国産小麦の需要増加に伴い、九州で作付面積が増えています。
用途
在来種である「ニシノカオリ」と比べて、製パン性がかなり改良されており、製パンに適しています。たんぱく質含有量が多いので、製パン用のほか、中華めん、そうめん、しょうゆの原料にも適しています。
由来
アルゼンチンの品種「Pampa INTA」と日本の品種「西海167号」を農研機構九州沖縄農業研究センターが交配し、2006年に品種登録されました。
品種の特性
- タンパク含有量は10.1%、灰分の含有量は0.45%。
- 肥料を多く与えて栽培すると、たんぱく質含量が増える。
● せときらら
山口、兵庫、岡山で栽培される秋播き小麦です。粉は強力粉で、グルテンが強くパン性に優れており、山口県で栽培されたものは、在来種の「ミナミノカオリ」「ニシノカオリ」より製パン性が優れているといわれています。山口、兵庫などで、作付面積が増えています。
この品種はこれまで主に行われてきた交配ではなく、遺伝子導入によって作られています。日本めん用小麦品種「ふくほのか」に、製パン性が向上する高分子量グルテニン遺伝子Glu-D1d、低分子量グルテニン遺伝子Glu-B3h、硬質性遺伝子Pinb-D1cを導入することで、作られました。農研機構近畿中国四国農業研究センターが開発し、2014 年に品種登録されています。
● ゆきちから
東北、北陸で栽培される秋播き小麦です。粉は強力粉で、製パンに向いています。たんぱく質を多く含むため、パンへの加工適性は高く、パン用市販粉と同程度の加工適性を持ちます。「東北141号 」と「さび系23号」を交配させて、農研機構東北農業研究センターが開発し、2005年に品種登録されました。
- ふくらみ:1
- モチモチ感:3
- 香り:1
■ ハルユタカ (入手困難)
北海道で栽培されていた春播き小麦で、粉は強力粉で、パン、めん類を作るのに適しています。タンパク含有量は11.5%、灰分の含有量は0.43%です。「春よ恋」の親にあたる品種で1987年に品種登録されましたが、栽培が難しく、2000年以降、「春よ恋」と入れ替わる形で生産量が激減したため、幻の小麦粉といわれています。
- ふくらみ:2
- モチモチ感:2
- 香り:3
■ はるきらり (入手困難)
北海道で栽培される春播き小麦で、粉は強力粉で、パン、めん類を作るのに適しています。「春よ恋」の後継品種として2009年から栽培されているが、生産量が少なく、市場にあまり出回っていません。
めんやお菓子を作るのに適した品種
● きたほなみ
概要
北海道で栽培される秋播き小麦で、国産小麦の中で生産量は断トツの1位です(2014年時点)。(2位の「ゆめちから」の2倍)。粉は中力粉で、うどんやそうめんなどのめん類やお菓子を作るのに適しています。
用途
中力粉で、うどん、そうめんなどのめんや、お菓子、ケーキなどを作るのに適しています。また「ゆめちから」とブレンドすることで、製パン用にも使われます。
由来
「北見72号」と「北系1660」を北海道立総合研究機構北見農業試験場が交配し、2006年に品種登録されました。「ホクシン」の後継品種です。
品種の特性
- 在来種の「ホクシン」にと比べて耐雪性、耐病性(うどんこ病、赤かび病、赤さび病)、穂発芽が優れており、収量が多い。
- さらに灰分が低く、製粉性に優れ、粉色およびゆでたうどんの色が優れている。

● さとのそら
北関東、三重、岐阜で栽培される秋播き小麦です。粉は中力粉で、うどん、そうめんなどに適しています。2010年に品種登録されました。単位面積当たりの収穫量が多い品種で、旧品種の農林61号からの転換が進んでおり、北関東4県では、中力粉を作るための小麦はほとんど「さとのそら」に置き換わりました。
● チクゴイズミ
九州で栽培される秋まき小麦です。粉は中力粉で、製めんに使われます。早生で単位面積当たりの収穫量が多いのが特徴です。農研機構九州沖縄農業研究センターが開発した品種で、福岡、佐賀、熊本、大分で生産される小麦の中では、トップクラスの生産量を誇ります。
● イワイノダイチ
愛知、栃木、岐阜で栽培される秋まき小麦です。粉は中力粉から薄力粉で、製めんに向いているが、菓子製造にも使われます。「秋9」と「きぬいろは」を農研機構九州沖縄農業研究センターが交配して2002年に品種登録されました。早生で収量が多く、製めん適性、特にめんの粘弾性に優れています。
● あやひかり
三重と埼玉で栽培される秋まき小麦です。粉は薄力粉から中力粉で、アミロースが少ないのが特徴です。三重県では特産品の伊勢うどんのめん用として、奨励品種に採用されています。アミロースが少ないため、めんにするともちもちしてなめらかな食感になります。また製菓用にも向いている。天ぷら、お好み焼きなど、さまざまな料理に使うことができます。「関東107号」と「きぬいろは」を農研機構が交配して、2003年品種登録しました。多収で耐倒伏性が高く、病気(赤さび病、コムギ縞萎縮病)に強いのが特徴です。
● さぬきの夢2009
香川県のみで栽培される秋播き小麦です。また香川県で栽培される小麦はほぼ100%がさぬきの夢2009です。粉は中力粉で、うどん(讃岐うどん)用に使われます。2014年、国産小麦の中で、最も高値(71,165円/トン)で落札されるなど、人気を誇っています。旧品種であるさぬきの夢2000に比べて、収量性が高く、うどんにすると滑らかで粘弾性もあるため、食味評価でもよい結果を得ています。
● ラー麦(ちくしW2号)
福岡県のみで栽培される秋播き小麦です。福岡県農林総合試験場で中華めん用に開発され、2010年に品種登録されました。なお「ラー麦」は、商標登録されています。もともとの品種名は「ちくしW2号」です。粉は強力粉ですが、通常の国産小麦と比べてグルテンを多く含んでおり、麺にしたとき、色が明るく、コシが強いのが特徴です。博多ラーメンではストレートな細麺が使われますがが、ゆで伸びがしにくく、博多ラーメンに合っているといわれています。
● きぬあかり
愛知県のみで栽培される秋播き小麦です。粉は中力粉で、製めんに向いています。愛知県農業総合試験場が、めんの加工適性が優れる「きぬの波」を母、早生で多収の「西海184号」を父として交配し、選抜を繰り返して開発したもので、2011年に品種登録されました。
生地を強くするグルテンを多く含むため、コシのあるうどんができます。また、灰分が少ない、めんの色が明るいといった特徴があります。さらにアミロースが少ないため、めんの食感はなめらかです。
在来種の「農林61号」より穂が長く、20%多く収穫できます。そのため「きぬあかり」の生産拡大とともに、愛知県の小麦の単位面積当たりの収穫量は向上し、2018、2019、2020年と3年連続で全国1位となっています。
● きたもえ
北海道で栽培される秋播き小麦です。粉は中力粉なり、めんにしたときの色合いがきれいなのが特徴です。小麦縞萎縮病に強く、この病気が発生している圃場でも収量・品質が低下しないため、小麦縞萎縮病発生地帯での栽培に適しています。収穫量は多くないものの、根強い人気があります。
製菓用の品種
● シロガネコムギ
九州、兵庫などで栽培される秋播き小麦です。粉は中力粉で、製菓用に向いています。農研機構九州沖縄農業研究センターが開発した品種ですが、九州ではすでに他の品種に置き換わりつつあります。一方で洋菓子店が多い兵庫県では、2019年の時点で作付面積の半分以上を占めており、大半が県内で製菓用として消費されています。

国産小麦の品種一覧
最後に、令和 3 年時点で栽培されている国産小麦のすべての銘柄(品種)を都道府県別にご紹介します。銘柄は同じ品種でも産地の道府県が異なると別銘柄として扱うので、167 銘柄ありますが、品種は 67 です。
なお必須銘柄とはその道府県の農産物検査を行っている登録検査機関であれば、どこに検査を依頼しても銘柄の検査を行うものです。一方の選択銘柄とは、登録検査機関が銘柄の検査を行うかどうかを選択することができる銘柄のことです。登録検査機関によっては当該銘柄の検査を行わない機関があります。
| 道府県 | 銘柄数 | 令和3年産産地品種銘柄 | |
|---|---|---|---|
| 必須銘柄 | 選択銘柄 | ||
| 北海道 | 11 | キタノカオリ、きたほなみ、タクネコムギ、はるきらり、ハルユタカ、春よ恋、ホクシン | 北見95号、つるきち、みのりのちから、ゆめちから |
| 青森県 | 5 | キタカミコムギ、ナンブコムギ、ネバリゴシ | もち姫、ゆきちから |
| 岩手県 | 10 | ナンブコムギ、ゆきちから | キタカミコムギ、銀河のちから、コユキコムギ、ナンブキラリ、ネバリゴシ、もち姫、やわら姫、ゆきはるか |
| 宮城県 | 5 | あおばの恋、シラネコムギ、ゆきちから | 銀河のちから、夏黄金 |
| 秋田県 | 2 | ネバリゴシ | 銀河のちから |
| 山形県 | 2 | ナンブコムギ、ゆきちから | |
| 福島県 | 4 | アブクマワセ、きぬあずま、ゆきちから | ふくあかり |
| 茨城県 | 5 | きぬの波、さとのそら、農林61号 | ゆめかおり、ユメシホウ |
| 栃木県 | 5 | イワイノダイチ、タマイズミ、農林61号 | さとのそら、ゆめかおり |
| 群馬県 | 6 | きぬの波、さとのそら、ダブル8号、つるぴかり、農林61号 | ゆめかおり |
| 埼玉県 | 4 | あやひかり、農林61号 | さとのそら、ハナマンテン |
| 千葉県 | 3 | 農林61号 | さとのそら、ユメシホウ |
| 神奈川県 | 6 | あやひかり、ニシノカオリ、農林61号 | さとのそら、ゆめかおり、ユメシホウ |
| 新潟県 | 2 | 夏黄金、ゆきちから | |
| 富山県 | 2 | さとのそら、ゆきちから | |
| 石川県 | 3 | シロガネコムギ、ナンブコムギ、ゆきちから | |
| 福井県 | 1 | 福井県大3号 | |
| 山梨県 | 3 | きぬの波、農林61号、ゆめかおり | |
| 長野県 | 8 | シラネコムギ、ユメセイキ | しゅんよう、ハナマンテン、ユメアサヒ、ゆめかおり、ゆめきらり、ゆめちから |
| 岐阜県 | 4 | イワイノダイチ、農林61号 | さとのそら、タマイズミ |
| 静岡県 | 3 | イワイノダイチ | きぬあかり、農林61号 |
| 愛知県 | 3 | イワイノダイチ | きぬあかり、ゆめあかり |
| 三重県 | 6 | あやひかり、タマイズミ、ニシノカオリ | さとのそら、もち姫、ユメシホウ |
| 滋賀県 | 7 | シロガネコムギ、農林61号、ふくさやか | ニシノカオリ、びわほなみ、ミナミノカオリ、ゆめちから |
| 京都府 | 3 | ニシノカオリ、農林61号 | せときらら |
| 兵庫県 | 6 | シロガネコムギ、ふくほのか | せときらら、セトデュール、ミナミノカオリ、ゆめちから |
| 奈良県 | 1 | ふくはるか | |
| 鳥取県 | 3 | 銀河のちから、チクゴイズミ、ミナミノカオリ | |
| 島根県 | 2 | 農林61号、ゆめちから | |
| 岡山県 | 3 | シラサギコムギ、ふくほのか | せときらら |
| 広島県 | 3 | キヌヒメ、ふくさやか、ミナミノカオリ | |
| 山口県 | 2 | せときらら、ふくさやか | |
| 徳島県 | 1 | チクゴイズミ | |
| 香川県 | 1 | さぬきの夢2009 | |
| 愛媛県 | 3 | チクゴイズミ、ミナミノカオリ | せときらら |
| 福岡県 | 7 | シロガネコムギ、チクゴイズミ、ちくしW2号、ニシホナミ、ミナミノカオリ | にしのやわら、みなみのやわら |
| 佐賀県 | 5 | シロガネコムギ、チクゴイズミ | さちかおり、はる風ふわり、ミナミノカオリ |
| 長崎県 | 4 | シロガネコムギ、チクゴイズミ、長崎W2号、ミナミノカオリ | |
| 熊本県 | 4 | シロガネコムギ、チクゴイズミ、ミナミノカオリ | くまきらり |
| 大分県 | 5 | チクゴイズミ、農林61号 | ニシノカオリ、はるみずき、ミナミノカオリ |
| 宮崎県 | 2 | チクゴイズミ、ミナミノカオリ | |
| 鹿児島県 | 2 | せときらら、ミナミノカオリ | |
| 合計 | 167 | 80 | 87 |
最後に、67 の品種を50音順に示します。
| ア | あおばの恋 アブクマワセ あやひかり イワイノダイチ |
タ | タクネコムギ ダブル8号 タマイズミ チクゴイズミ ちくしW2号(ラー麦) つるきち つるぴかり |
マ | ミナミノカオリ みなみのやわら みのりのちから もち姫 |
|---|---|---|---|---|---|
| カ | キタカミコムギ キタノカオリ きたほなみ 北見95号 きぬあかり きぬあずま きぬの波 キヌヒメ 銀河のちから くまきらり コユキコムギ |
ナ | 長崎W2号 夏黄金 ナンブキラリ ナンブコムギ ニシノカオリ にしのやわら ニシホナミ ネバリゴシ 農林61号 |
ヤ | やわら姫 ゆきちから ゆきはるか ゆめあかり ユメアサヒ ゆめかおり ゆめきらり ユメシホウ ユメセイキ ゆめちから |
| サ | さとのそら さちかおり さぬきの夢2009 しゅんよう シラサギコムギ シラネコムギ シロガネコムギ せときらら セトデュール |
ハ | ハナマンテン はる風ふわり はるきらり はるみずき ハルユタカ 春よ恋 びわほなみ ふくあかり ふくさやか ふくはるか ふくほのか 福井県大3号 ホクシン |
||
まとめ
小麦の自給率は 16%です。店頭で売られている小麦粉は、国産小麦と輸入小麦で 1.5~2 倍の価格差があります。
国産小麦では、収穫前に散布される農薬のグリホサート、ポストハーベスト農薬としての殺虫剤は使われておらず、遺伝子組み換え小麦もありません。
輸入小麦は 5 品種しかないのに対して、国産小麦は 67 品種あります。国産小麦は各自治体でブランド化して高い値段で販売する戦略を取っていることが多いです。
参考文献
1) 令和7年度食料需給表(概算) 令和8年8月7日公表、農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/fbs/index.html
2) 残留農薬基準値検索システム、日本食品化学研究振興財団
http://db.ffcr.or.jp/front/
