グルテンはからだにどんな影響を与えるか~最新の研究成果より~

グルテンは小麦などに含まれるたんぱく質です。消化酵素で分解されにくく、アレルギー反応や炎症反応の原因になるほか、腸のバリア機能を破壊したり、腹部膨満、腹痛、下痢などの原因になることが知られています。さらに、さまざまな病気・症状との関連も指摘されています。ここでは、最新の医学論文に基づいて、グルテンの影響について説明します。

グルテンは特殊なたんぱく質

グルテンは小麦、大麦、ライ麦とその交雑種だけに含まれる、特殊なたんぱく質です。ここでは、どこがどう特殊なのかについて、解説していきます。

水を加えることで作られるたんぱく質の集合体

ここでは、理解しやすくするために、小麦のケースについて説明します。

小麦にはさまざまな種類のたんぱく質が含まれていますが、その中でも グリアジンとグルテニンは、たんぱく質全体のそれぞれ 40 % ずつを占めている、主要なたんぱく質です。

グルテンは、このグリアジンとグルテニンに水を加えて混ぜることで作られる、たんぱく質の集合体で、細かく分けると、数百種類のたんぱく質で構成されています 1)

パンやめんの生地を作るとき、小麦粉に水を加えてこねると、もともとサラサラだった小麦粉が粘り気を生じます。このとき、小麦粉に含まれていたグリアジンとグルテニンが混ぜ合わされて、生地の中にグルテンが作られているのです。

小麦には、グリアジンとグルテニンが、ともに 40 % ずつ含まれている、と説明しました。したがって、小麦のたんぱく質の 80~85 % (重量比)はグルテンとなります。

網目状で伸びやすく弾力性がある

たんぱく質は、数万個のアミノ酸がつながった、鎖のような構造をしています。上のイラストをごらんください。グリアジンは直線状の構造をしていますが、グルテニンは枝分かれ構造です。直鎖構造のグリアジンには 粘着性と伸展性があり、枝分かれ構造のグルテニンには弾力性と強度があります。その結果、この 2 種類のたんぱく質が合わさってできたグルテンは、伸びやすく弾力性があり、適度な強度と粘着性があるほか、三次元の網目状構造も兼ね備えています。

網目状構造で弾力性があるため、パン生地が発酵するとき、生地の内部にガスを閉じ込めることができるので、ふっくらとしたパンを作ることができます。また伸びやすく弾力性があるため、コシの強い麺を作ることができます。

グルタミンとプロリンが多く、消化酵素による分解を受けにくい

たんぱく質は数万個のアミノ酸が鎖のようにつながってできています。人体をつくるアミノ酸は 20 種類ありますが、グルテンに含まれるアミノ酸は、グルタミンが35%、プロリンが15%と、きわめて偏った構成になっています 1)

食物として体内に入ったたんぱく質は、消化酵素によって分解されて、構成単位であるアミノ酸になり、吸収されます。ところが、グリアジンの中にあるグルタミンとプロリンが多く含まれる特定のアミノ酸配列は、消化酵素の分解を受けにくいことがわかっています。

グルテンが有害といわれる理由

消化酵素で分解されずペプチドのまま小腸へ到達する

食べ物に含まれるたんぱく質は、胃酸と消化酵素で分解され、構成単位であるアミノ酸になります。そしてアミノ酸は小腸の壁から体内に吸収されます。グルテンもたんぱく質なので、このように分解されるはずなのですが、実はそうはいかないのです。グルテンは、① 水に溶けない、② 網目状で消化酵素と接触しにくい、③ 消化酵素の分解を受けにくい特定のアミノ酸配列がある、という理由から、アミノ酸にまで分解されず、アミノ酸が数百個から数千個つながったペプチドの状態で、小腸内に長く留まることになります。

つまり、グルテンはアミノ酸にまで分解されず、部分的に分解されたペプチドの状態で、小腸まで到達します。ペプチドは小腸で免疫反応を引き起こしたり、体内に吸収されて炎症反応を引き起こすことがあります。なお消化酵素の量や分解能力には個人差があります。そのため消化酵素の分泌量が少ない人や、その能力が低い人は、グルテンの影響を受けやすくなります。

アレルギー反応や炎症反応を起こす

グルテンは多数のたんぱく質の集合体ですが、この中にはアレルギー反応炎症反応を起こすものがあります。ただ食べものに含まれているたんぱく質は、通常消化酵素で分解されるため、実際にアレルギー反応や炎症反応を引き起こしているのは、たんぱく質が部分的に分解されてできたペプチドと考えられています。

ペプチドはアミノ酸が決まった配列で並んだもので、この中で特定の配列を持つものが免疫系に作用して、炎症反応やアレルギー反応を起こすことがあります。このようなペプチドを、免疫原性ペプチドといいます 2)

ところで、セリアック病の原因といわれるグリアジン33-merです。これはグリアジンが分解してできたペプチドで、アミノ酸が 33 個つながったものです。先ほど説明したグルタミンとプロリンが多いため、この部分だけが胃酸や消化酵素で分解されずに、十二指腸まで到達します。その結果、このペプチドは免疫系に作用して十二指腸粘膜を損傷し、セリアック病を起こします。

腸のバリア機能を破壊しリーキーガットを起こす

口と肛門を通じて外界とつながっている腸は、さまざまな異物にさらされています。その一方で、人間は栄養分の 90 %を腸から吸収しています。そのため腸には必要なものは通すが、からだに害があるものは通さないバリア機能が備わっています。

腸のバリア機能の一つに、腸管の表面の細胞のすき間を狭くすることで異物の透過を防ぐ、細胞間接着装置というのがあります。この機能を調節していているのが、ゾヌリンという物質です。ゾヌリンは細胞間接着を緩めることで、腸管表面の透過性を高めますが、グルテン由来のペプチドには、ゾヌリンの放出を促進する作用があることがわかっています 3)

つまりグルテンを含むものを食べると、腸内でゾヌリン濃度が上昇し、腸管細胞のすき間が広がってしまいます。そのため本来吸収されない分子量の大きなものまで吸収され、全身にさまざまな影響を与えます。例えば、グルテンが原因で起きる運動失調は、グルテンの不十分な分解で生じたペプチドが腸から吸収されることで、運動機能を司る小脳の神経細胞が破壊されることが原因です。さらに、湿疹や肌荒れにも、吸収されない物質が原因となることがあります。

腸の透過性が異常に上がった状態を、リーキーガットといいます。つまり、Leaky とは漏れやすい意味です。Gut は腸を表し、腸のバリア機能が損なわれた状態です。リーキーガットについては、こちらの記事も参考にしてください。

 

関連記事

リーキーガットとは、腸のバリア機能が損なわれた結果、本来なら入らない物質が体内に入る状態になることです。腸のバリア機能の一つが、腸管上皮細胞のすき間を閉じている細胞間接着装置です。ゾヌリンというたんぱく質が作用すると、このすき間が緩んで、腸[…]

 

腹部膨満、腹痛、下痢、便秘を起こす

消化酵素で分解されず、また小腸で吸収されなかったグルテンの分解物(ペプチド)は、消化酵素のエサになります。そのためグルテンを多く含むものを食べると、食後 2 時間くらいから、一時的におなかが張ったり、痛みを感じたり、下痢をしたりすることがあります。これは、腸内細菌がグルテンを食べてガスを発生させることが原因の一つです。

通常の検査で、腸に炎症・潰瘍・内分泌異常などが認められないにも関わらず、慢性的に腹部膨満、腹痛、下痢、便秘を起こす場合、過敏性腸症候群と診断されることがあります。現在、日本人の 10 人に 1 人が過敏性腸症候群だそうです 4)。さらに、その予備軍ともいえる下部腹痛の人は 6 人に 1 人いるといわれています 5)。この人たちの中には、グルテンが原因でこのような症状が起きている人がいると、容易に推測されます。一方で、過敏性腸症候群と診断された人の中の実に 14~30 %は、グルテンが原因だったという研究結果もあります 6) 7)

グルテンが関係する病気・症状

ここではグルテン(小麦に含まれるグルテン以外の成分も含む)が関係しているといわれている病気と症状をまとめて示します。具体的な内容はこのサイト内で解説していますので、あわせてご覧ください。また以下の項目についてご理解いただいたうえで、参考になさってください。

あらかじめ断っておきますが、症状の種類・程度には個人差があります。また、複数の病気で似た症状が現れる場合があります。そのため、何が原因で起きているのか、またどの病気なのか、については、専門の医師による診断を受けてください。また、グルテンと症状の関係については諸説あり、専門家の間でも異なる意見があります。さらに、ここに記載した症状は、グルテン以外の原因で起こることもあります。

おなかの症状

腹部膨満 : 非セリアックグルテン過敏症 8)、セリアック病 9)、過敏性腸症候群 10)の症状。

腹痛、下痢 : 非セリアックグルテン過敏症、セリアック病、小麦アレルギー 11)の症状。

便秘 : 非セリアックグルテン過敏症、過敏性腸症候群の症状。

脂肪便 : セリアック病の症状。

ディスバイオシス(腸内毒素症)12) : セリアック病と関係。

 

 

皮膚の症状

湿疹 : 非セリアックグルテン過敏症、小麦アレルギーの症状。

紅斑、じんましん、血管性浮腫、かゆみ : 小麦アレルギーの症状。

疱疹状皮膚炎 : セリアック病の症状。

ニキビ、吹き出物 : 非セリアックグルテン過敏症と関係。

肌荒れ : リーキーガットと関係。

アトピー性皮膚炎 : グルテンフリーで症状が軽減されたという報告がある 13)

円形脱毛症 : セリアック病を併発している場合あり 14)

抜け毛 : 非セリアックグルテン過敏症と同じメカニズムで起きている可能性あり。

 

女性に特有の症状

月経前症候群(PMS) : グルテンフリーで軽減するという記事はあるが論文はない 15)

ひどい生理痛(月経困難症) : セリアック病の場合グルテンフリーで症状が軽減されたとの論文あり 16)

子宮内膜症 : グルテンフリーが痛みの軽減に有効との論文あり 17)

鉄欠乏性貧血 : セリアック病の症状。非セリアックグルテン過敏症との関係も指摘されている 18)

 

神経症状

頭痛 : 非セリアックグルテン過敏症、小麦アレルギー、リーキーガットの症状。

もやもや感(ブレインフォグ、軽い認知障害) 19) : 非セリアックグルテン過敏症、リーキーガットの症状。

抑うつ : 非セリアックグルテン過敏症、リーキーガットとの関係が指摘されている。

平衡感覚喪失 : 非セリアックグルテン過敏症、リーキーガットとの関係が指摘されている。

グルテン運動失調 20)

統合失調症 21)

自閉スペクトラム症(ASD):グルテンフリーで症状が改善したという論文 22) としなかったという論文 23) がある。

注意欠如・多動症(ADHD):セリアック病を併発している場合に限りグルテンフリーが有効 24)

 

全身症状

慢性疲労、倦怠感 : 非セリアックグルテン過敏症、セリアック病、リーキーガットの症状。

関節痛、しびれ : 非セリアックグルテン過敏症、リーキーガットの症状。

筋力低下、食欲不振、ビタミンD欠乏症、カルシウム欠乏症 : セリアック病(栄養吸収障害)の症状。

更年期障害 : セリアック病、非セリアックグルテン過敏症と症状が重複しており、セリアック病の人は症状が重いという論文あり 25)

橋本甲状腺病 : グルテンの関与が指摘されている自己免疫疾患 26)

 

眼・鼻・口の症状

結膜充血、浮腫、眼のかゆみ、まぶたの腫れ、鼻汁、鼻づまり、くしゃみ : 小麦アレルギーの症状。

舌炎、口角炎 : セリアック病(栄養吸収障害)の症状。

 


参考文献

1) Wei G, Helmerhorst EJ, Darwish G, Blumenkranz G, Schuppan D. Gluten Degrading Enzymes for Treatment of Celiac Disease. Nutrients. 2020; 12(7):2095. Published 2020 Jul 15. doi: 10.3390/nu12072095

2) Cebolla Á, Moreno ML, Coto L, Sousa C. Gluten Immunogenic Peptides as Standard for the Evaluation of Potential Harmful Prolamin Content in Food and Human Specimen. Nutrients. 2018; 10(12):1927. Published 2018 Dec 5. doi: 10.3390/nu10121927

3) Fasano A. Zonulin, regulation of tight junctions, and autoimmune diseases. Ann N Y Acad Sci. 2012; 1258(1):25-33. doi: 10.1111/j.1749-6632.2012.06538.x

4) 日本消化器病学会ガイドライン

 

https://www.jsge.or.jp/guideline/disease/ibs.html

5) わかりやすい病気のお話シリーズ12 過敏性腸症候群 日本臨床内科医会(2006)

6) Usai-Satta P, Bassotti G, Bellini M, Oppia F, Lai M, Cabras F. Irritable Bowel Syndrome and Gluten-Related Disorders. Nutrients. 2020; 12(4):1117. Published 2020 Apr 17. doi: 10.3390/nu12041117

7) Barbaro MR, Cremon C, Stanghellini V, Barbara G. Recent advances in understanding non-celiac gluten sensitivity. F1000Res. 2018; 7:F1000 Faculty Rev-1631. Published 2018 Oct 11. doi: 10.12688/f1000research.15849.1

8) Catassi C, Bai JC, Bonaz B, et al. Non-Celiac Gluten sensitivity: the new frontier of gluten related disorders. Nutrients. 2013; 5(10):3839-3853. Published 2013 Sep 26. doi: 10.3390/nu5103839

9) Lebwohl B, Ludvigsson JF, Green PH. Celiac disease and non-celiac gluten sensitivity. BMJ. 2015 351:h4347. Published 2015 Oct 5. doi: 10.1136/bmj.h4347

10) Lacy BE, Patel NK. Rome Criteria and a Diagnostic Approach to Irritable Bowel Syndrome. J Clin Med. 2017; 6(11):99. Published 2017 Oct 26. doi: 10.3390/jcm6110099

 

11) Elli L, Branchi F, Tomba C, et al. Diagnosis of gluten related disorders: Celiac disease, wheat allergy and non-celiac gluten sensitivity. World J Gastroenterol. 2015; 21(23):7110-7119. doi: 10.3748/wjg.v21.i23.7110

12) Sanz Y. Microbiome and Gluten. Ann Nutr Metab. 2015; 67 Suppl 2:28-41. doi: 10.1159/000440991

13) Nosrati A, Afifi L, Danesh MJ, . Dietary modifications in atopic dermatitis: patient-reported outcomes. J Dermatolog Treat. 2017; 28(6):523-538. doi: 10.1080/09546634.2016.1278071

14) Rodrigo L, Beteta-Gorriti V, Alvarez N, . Cutaneous and Mucosal Manifestations Associated with Celiac Disease. Nutrients. 2018; 10(7):800. Published 2018 Jun 21. doi: 10.3390/nu10070800

15) Peconic Bay Medical Center ウェブサイト

 

https://www.pbmchealth.org/news-events/blog/signs-you-might-have-gluten-intolerance

 

16) Porpora MG, Picarelli A, Prosperi Porta R, Di Tola M, D’Elia C, Cosmi EV. Celiac disease as a cause of chronic pelvic pain, dysmenorrhea, and deep dyspareunia. Obstet Gynecol. 2002; 99(5 Pt 2):937-939. doi: 10.1016/s0029-7844(01)01711-2

17) Marziali M, Venza M, Lazzaro S, Lazzaro A, Micossi C, Stolfi VM. Gluten-free diet: a new strategy for management of painful endometriosis related symptoms?. Minerva Chir. 2012; 67(6):499-504.

18) Stefanelli G, Viscido A, Longo S, Magistroni M, Latella G. Persistent Iron Deficiency Anemia in Patients with Celiac Disease Despite a Gluten-Free Diet. Nutrients. 2020; 12(8):2176. Published 2020 Jul 22. doi: 10.3390/nu12082176

19) Yelland GW. Gluten-induced cognitive impairment (“brain fog”) in coeliac disease. J Gastroenterol Hepatol. 2017; 32 Suppl 1:90-93. doi: 10.1111/jgh.13706

20) Hadjivassiliou M, Sanders DD, Aeschlimann DP. Gluten-related disorders: gluten ataxia. Dig Dis. 2015; 33(2):264-268. doi: 10.1159/000369509

 

21) Levinta A, Mukovozov I, Tsoutsoulas C. Use of a Gluten-Free Diet in Schizophrenia: A Systematic Review. Adv Nutr. 2018; 9(6):824-832. doi: 10.1093/advances/nmy056

22) Ghalichi F, Ghaemmaghami J, Malek A, Ostadrahimi A. Effect of gluten free diet on gastrointestinal and behavioral indices for children with autism spectrum disorders: a randomized clinical trial. World J Pediatr. 2016; 12(4):436-442. doi: 10.1007/s12519-016-0040-z

23) Croall ID, Hoggard N, Hadjivassiliou M. Gluten and Autism Spectrum Disorder. Nutrients. 2021; 13(2):572. Published 2021 Feb 9. doi: 10.3390/nu13020572

24) Niederhofer H. 注意欠陥・多動性障害とセリアック病の関連性:簡単な報告。Prim Care Companion CNS Disord . 2011 ;13(3):PCC.10br01104. doi: 10.4088/PCC.10br01104

25) Santonicola A、Iovino P、Cappello C、Capone P、Andreozzi P、Ciacci C. 初経から閉経まで: セリアック病女性の妊娠可能な寿命。更年期障害2011年; 18(10):1125–1130。土井: 10.1097/gme.0b013e3182188421

 

26) Liontiris MI、Mazokopakis EE。 橋本甲状腺炎(HT)の簡潔なレビューと、HT患者の自己免疫および食事管理におけるヨウ素、セレン、ビタミンD、グルテンの重要性。さらなる調査が必要な点。Hell J Nucl Med . 2017 ;20(1):51-56. doi: 10.1967/s002449910507