穀物、いも類の主成分あるでんぷんを取り出したのが、食用でんぷんです。コーンスターチ、ばれいしょでんぷん(片栗粉)、タピオカでんぷん、小麦でんぷんなどいろんな種類があります。料理のとろみ付けだけでなく、食品添加物や甘味料の製造原料として使われているほか、食感改良や保存性の向上のために、身近な加工食品で広く使われています。
でんぷん
でんぷんは、ほぼすべての植物に含まれる炭水化物です。でんぷんには、アミロースとアミロペクチンの 2 種類があり、いずれも数百個から数万個のグルコースが鎖状につながってできています。植物の中では、これが結晶状になったでんぷん粒として貯蔵されています。でんぷんは水には溶けませんが、水を加えて 70 ℃以上に加熱すると、でんぷんの鎖の間に水の分子が入り込んで、全体が軟らかくなります。この現象を糊化(こか)あるいはアルファ化といいます。生のでんぷんは食べることができませんが、糊化したでんぷんは消化酵素で分解されるので、食べることができます。
でんぷんは、穀物、いも類、豆類に多く含まれるため、炭水化物の摂取源としてよく食べられてきました。また、加工食品の普及とともに、でんぷんを多く含む植物からでんぷんだけを取り出した食用でんぷんが、さまざま用途で使われています。

コーンスターチ
食用でんぷんの中で、最も生産量が多いのが、トウモロコシからつくられるコーンスターチで、全世界で生産されるでんぷんの 80 %、日本で生産されるでんぷんの 85 %を占めています。コーンスターチは、わたしたちがふだん目にするとうもろこしとは異なるデントコーンという品種から作られており、デントコーンは全量が海外から輸入されています。輸入先はアメリカが 90 %を占めており、また 90 %が遺伝子組み換え作物と考えられます。コーンスターチは食用でんぷんの中で最も安価で、、食用以外に、食品添加物、化粧品、製紙原料としても使われます。
とうもろこしでんぷんの中には、ワキシーコーンというもち種のとうもろこしから作られるものもありますが、ワキシーコーンから作られるコーンスターチは、ワキシーコーンスターチとして区別されています。
- デントコーン(馬歯種) … コーンスターチの原料、飼料
- ワキシーコーン(もち種) … ワキシーコーンスターチの原料
- スイートコーン(甘味種) … よく目にするトウモロコシ、食用
- ポップコーン(爆裂種) … ポップコーンの原料
特性
コーンスターチのでんぷん粒の粒径は 3~26µm(平均 15µm)で、でんぷん粒の粒子が小さく、粒径がそろっているのが特徴です。そのため、糊化後の安定性がよく、冷えても粘度が変わりません。また口当たりがなめらかです。一方、糊化したときの透明性は、片栗粉より低いです。
用途
コーンスターチはさまざまな食品に使われます。家庭で使う場合は、プリン、カスタードクリームなどの洋菓子に使うことが多いですが、中華料理のとろみ付けに使うこともあります。
一方、業務用では、コーンスターチは加工食品や食品添加物の原料として、広く使分けています。
- ビール、発泡酒 … アルコール発酵の原料として使われます。原材料欄には「スターチ」と書かれています。
- 果糖・ぶどう糖液糖、ぶどう糖・果糖液糖 … コーンスターチを酵素で分解して作る甘味料です、砂糖より3割ほど値段が安いため、清涼飲料水、氷菓、菓子によく使われています。
- 水あめ … コーンスターチを酵素または酸で分解して作る甘味料ですが、食品添加物ではなく、食品として扱われます。洋菓子、和菓子に使われます。
馬鈴薯でんぷん(ばれいしょでんぷん、片栗粉)
馬鈴薯でんぷんはコーンスターチに次いで、日本で多く生産されるでんぷんですが、生産量はコーンスターチの1/10ほどです。原料は馬鈴薯(ジャガイモ)の塊茎です。日本では、病害虫の侵入を防ぐために、生の馬鈴薯の輸入は行われていないので(冷凍ポテトフライ等は輸入されています)、原料は 100 %国内産です。またでんぷん用の馬鈴薯の栽培は、北海道のみで行われているため、100 %北海道産です。
馬鈴薯でんぷんは、片栗粉という名前で呼ばれています。明治時代に北海道で馬鈴薯の栽培が始まる前は、カタクリという植物の根から採ったでんぷんを片栗粉と呼んでいました。でんぷんの性質がよく似ていたことから、馬鈴薯のでんぷんを片栗粉という名前で引き続き販売しているそうです。
特性
馬鈴薯でんぷんのでんぷん粒の粒径は 10~90 µm(平均 50µm)で、市販のでんぷんの中で、最も粒が大きいのが特徴です。また粒径のばらつきも大きく、楕円形と球状の大小のでんぷん粒から成ります。馬鈴薯でんぶんは糊化温度が糊化温度が55~66℃と低く、最高粘度が高いため、調理のとろみ付けによく使われます。また糊化した状態では透明です。
用途
馬鈴薯でんぷんは、あんかけのあんなど、料理のとろみ付けや、揚げ物の衣として使われます。あんかけのあんに適するのは、料理の火を止めた後に、水に溶いた馬鈴薯でんぷんを入れるだけで、簡単に糊化することができるためです。さらに糊化したでんぷんの粘度が高いため、とろみが持続し、調味料を食材にからめるという役割を果たします。また馬鈴薯でんぷんには、油脂の乳化を安定させる働きもあり、中華料理をあんかけにすると、油っぽさが薄れます。また糊化したときに透明で、料理の色を変えません。
馬鈴薯でんぷんをとろみ付けに使うときには、倍量の水に溶いた馬鈴薯でんぷんを、煮立っている状態の食材に加え、手早くかき混ぜて、全体が透明になるまで火を通すことが、うまくとろみをけるコツです。料理に酢やレモンを入れるときは、十分とろみがついた後に入れます。酢やレモンを先に入れると、とろみがうまくつかないことがあります。
馬鈴薯でんぷんは、揚げ物の衣にも使われます。代表的なものが竜田揚げです。竜田揚げは、鶏肉や魚にしょうゆで下味をつけてから、馬鈴薯でんぷんをまぶして油で揚げたものです。糊化したでんぷんの粘度が高いため、小麦粉を使った唐揚げよりもカラッと揚がります。ただ唐揚げと竜田揚げの違いは明確ではなく、馬鈴薯でんぷんを使った唐揚げもあるようです。
業務用としては、かまぼこ、ちくわ、魚肉ソーセージといった水産練り製品の原材料や、加工でんぷん(食品添加物)の原料として使われています。馬鈴薯でんぷんには、水に混ぜると、水としっかりと結合する性質があります。これを保水性といいます。保水性があるおかげで、加工食品にしっとりとした食感や弾力、もちもち感やゼリー状のぷるぷるとした感じを与えることができます。かまぼこ、ちくわ、魚肉ソーセージだけでなく、和菓子、めん類、パンにも使われています。
ただ、原材料欄には「でんぷん」としか表示されないので、馬鈴薯でんぷん粉かどうか、見分けはつきませんが、他のでんぷんと比べて保水性が強いのが、馬鈴薯でんぷんの特徴です。この保水性を利用したお菓子の一つに、ベビーボーロがあります。馬鈴薯でんぷんを加えた生地を焼くと、水が蒸発し生地の中に空洞ができます。そのためベビーボーロを口に入れると、さっと溶けるような食感が得られます。
このほか、馬鈴薯でんぷんは、くずきり、はるさめの原料にもなります。
馬鈴薯でんぷんの用途別消費量は次の通りです(2014年10月~2015年9月のデータ)。
- 糖化製品(果糖・ぶどう糖液糖、デキストリンなど)44千トン/年
- 片栗粉 42千トン/年
- 加工でん粉(食品添加物)30千トン/年
- 菓子類 16千トン/年
- めん類 12千トン/年
- 水産練り製品、ハム、ソーセージ 9千トン/年

甘藷でんぷん(さつまいもでんぷん)
甘藷でんぷんはコーンスターチ、馬鈴薯でんぷんに次いで、日本で 3 番目に多く生産されるでんぷんですが、生産量はでんぷん全体のわずか 1% に過ぎません。原料はサツマイモの塊根です。馬鈴薯でんぷんの原料はジャガイモの「塊茎」、甘藷でんでんぷんの原料はサツマイモの「塊根」で、どちらも土の中にできるイモなのですが、塊茎は茎が変化したもの、塊根は根が変化したもの、という違いがあります。原料はすべて鹿児島県産の甘藷(サツマイモ)なので、100% 国内産原料です。
特性
甘藷でんぷんのでんぷん粒の粒径は 15~35 µm(平均 25µm)です、大きめの釣鐘型の粒子と球形の粒子が混在しています。でんぷん粒の大きさ、粘度や糊の性状としては、馬鈴薯でんぷんと穀類でんぷんの中間の位置しています。
用途
大部分が糖化用で、一部が和菓子やめん類の原料に使われています。粉そのものは一般にはほとんど出回っていないため、家庭で料理に使う機会はまずありません。ただ鹿児島県では、落花生を使った「ピーナッツ豆腐」、さつまいもを使った「いももち」などの家庭料理で、甘藷でんぷんが使われているそうです。また揚げ物やあんかけ、南蛮漬けにも使えるそうです。鹿児島県は甘藷でんぷんの消費を拡大するため、レシピの開発や料理教室の開催などを行っています。
甘藷でんぷんには独特な食感と風味があることから、葛粉の代替品として利用されることが多く、葛切り、葛もち、ゴマ豆腐などに使われています。またはるさめやわらび餅の原料として使われることもあります。また馬鈴薯でんぷんと同じく、保水性があるので、水産練り製品や焼き菓子の原料としても使われます。焼き菓子に使うと、サクサクとした軽さと口どけのよさをあわせ持った食感が得られます。
甘藷でんぷんの用途別消費量は次の通りです(2015年10月~2016年9月のデータ)。
- 糖化製品(果糖・ぶどう糖液糖、デキストリンなど ) 23千トン/年
- めん類・菓子類・水産練り製品 10千トン/年
- 加工でんぷん(食品添加物) 2千トン/年
小麦でんぷん
小麦粉に水を加えてこねると、生地ができます。この生地を水の中で揉み洗いすると、水の中にでんぷんが溶け出してきて、水が乳白色になります。この水を遠心分離にかけて回収した粉が、小麦でんぷんです。小麦でん粉は浮き粉とも呼ばれます。ちなみに水に溶けださずに残るのは、グルテンと呼ばれるたんぱく質で、麩の原料となります。このように小麦でんぷんは、麩を製造する過程で出た副産物、ということもできます。
特性
小麦でんぷんのでんぷん粒の粒径は 1~40 µm(平均 10 µm)なのですが、粒径が 2~10 µmの小粒子と、粒径が 15~40 µmの大粒子の 2 種類の粒子に分けられます。大きさの異なる 2 種類のでんぷん粒が混じっていることが、小麦でんぷんの特徴で、この 2 種類は比重差を利用して分けることもできます。大粒子の方が、糊化しやすく、粘度が高いという性質があります。
小麦でんぷんには、
糊化開始温度(粘り気が出る温度)が高い、
糊化した後、保水性が高く、ソフトな食感が出る、
でんぷんから水が抜けて、構造がバラバラになる老化(ベータ化)が起こりにくい、
加熱、撹拌に対して安定している、
耐塩性・耐酸性にも比較的優れた粘度特性、糊液安定性を示す
という特性があります。これらの特性を活かして、多くの加工食品に使われています。
用途
小麦でんぷんの用途は業務用がほとんどで、一般用にはほとんど出回っていません。主に加工食品の保水性向上、食感改良、グルテン濃度の調整に使われます
- 蒸し餃子
中華料理の点心で出される皮が半透明の蒸し餃子は、小麦でんぷんから作られており、もちもち、ツルッとした食感があります。 - 水産練り製品(かまぼこ、ちくわ、魚肉ソーセージなど)
弾力性、歯ごたえとソフトな食感を与えます。また色が白いので、製品の白さを増すことができます。さらに保水性があるため、製品を水増しするとともに、消費期限を延ばします。増量剤としての役割もあります。なお、かまぼこには、関東では弾力性を持たせるためにばれいしょでん粉が、関西ではソフト感のある風味を引き出すために小麦でんぷんが使われるそうです。 - 餃子、焼売、卵焼き、ハンバーグ、ミートボール
食品の離水防止による消費期限の延長と、増量剤とするために使われています。
小麦粉との違い
小麦でんぷんも小麦粉も白い粉で、見た目はほとんど同じですが、性質は違います。
| 小麦でん粉 | 小麦粉 | |
|---|---|---|
| 成分 | グルテンが少ない(ゼロではない) たんぱく質は0.2~0.87% |
グルテンが含まれる(7~13%) たんぱく質は8~9%(薄力粉) |
| 食感 | 軽い | 重い |
| 味・風味 | 無味無臭 | 小麦の味と風味 |
| 使用目的 | 食感、外観、保存性の改良 成分の増量、つなぎ 小麦粉のグルテン濃度の調整 |
食品の主要原材料 |
| 原材料表示 | でん粉(小麦を含む) | 小麦粉 |
| アレルゲン表示 | 小麦 | 小麦 |
小麦でんぷんは小麦粉からグルテンを製造する際の副産物なので、小麦粉と比べるとグルテンの量は少ないと考えられます。ある小麦でん粉のメーカーのホームページに、自社の小麦でんぷんの分析値が載っていました。それによると、小麦でんぷんに含まれるたんぱく質の量は、最も少ない製品で 0.2 %、最も多い製品で 0.87 %でした。
小麦粉に含まれるたんぱく質には、水に溶ける水溶性たんぱく質と、水に溶けない不溶性たんぱく質があります。小麦でんぷんの製造方法から考えて、小麦でんぷんに含まれるたんぱく質の大半は、水溶性たんぱく質であると思われます。グルテンは不溶性たんぱく質なので、小麦でんぷんにはほとんど含まれていないと推測されますが、分析してみないとわかりません。
米でんぷん(ライススターチ)
米でんぷんは、白米を磨砕機ですりつぶし、水を加えてできた乳液からでんぷんを抽出したものです。うるち米から作ったものと、もち米から作ったものがあります。米でんぷんを取り出す際、残った部分は飼料として利用されます。
特性
米でんぷんのでんぷん粒の粒径は、うるち米、もち米とも 2~10 µm(平均 5 µm)と、食用でんぷんの中で最小です。粒子が細かく揃っているため、焼き菓子などでは軽く口どけがよい食感になるほか、たれ、ソースではざらつきのないなめらかな食感になります。
用途
米でんぷんは業務用がほとんどで、一般用にはほとんど出回っていません。小麦でんぷんと同様、老化しにくく、離水やゲル化が起こりにくいことから、加工食品の品質保持や離水防止の目的で使われます。具体的には、米菓、カスタードクリーム、焼き菓子、たれ、ソースなどがあります。
米粉との違い
米でんぷんも米粉も白い粉で、見た目はほとんど同じですが、性質は違います。
| 米でん粉 | 米粉 | |
|---|---|---|
| 成分 | たんぱく質は0.3% | たんぱく質は6% |
| 食感 | 軽い | 重い |
| 味・風味 | 無味無臭 | 米の味と風味 |
| 使用目的 | 食品の改良剤 菓子、パン、めん、たれ、ソース、玉子焼き、カスタードクリーム、ホワイトソースなど |
食品の主要原材料 |
| 原材料表示 | でん粉、米でん粉 | 米粉 |
タピオカでんぷん
タピオカでんぷんは、キャッサバと呼ばれる熱帯原産の植物の塊根から取れるでんぷんです。価格が安く、加工食品用以外に、加工でん粉の原料や工業原料としても使われます。キャッサバにはシアン化合物という毒が含まれるため、いもの皮を取り除き、細かくしたイモを長時間水にさらして、シアン化合物を薄めながら、でんぷんを回収します。
特性
タピオカでんぷんのでんぷん粒の粒径は 4~35 µm(平均 20µm)です。
用途
タピオカでんぷんの用途といえば、以前大流行したタピオカミルクティです。タピオカミルクティに入っている粒は、タピオカパールと呼ばれ、タピオカでんぷんに水を加えて糊化したものを、特殊な形状の容器をつかって球形にしたものです。黒い色をしているのは、カラメル色素やイカ墨で着色しているためで、もともとの色は半透明です。適度な歯ごたえと、プチプチした食感があります。
このほか、タピオカでんぷんはわらび餅の原料にも使われていますが、まだ一般的ではありません。
タピオカでんぷんは価格が安いことから、加工食品に使われているほか、加工でんぷんの原料や、製紙用、建築用材料としても使われています。

サゴでんぷん(さごやしでんぷん)
サゴでんぷんはサゴヤシというヤシ科の植物の幹に蓄えられてます。サゴヤシは東南アジアで栽培されてますが、高さが 15~20 m、幹の直径が 70~80 cmにもなる大木で、この木の幹 1 本から、200~400 kgのでんぷんを採ることができます。ただしこの大きさに成長するまでに、10年かかります。サゴでんぷんは 2008 年の時点で、年間 16 千トンが、マレーシアとインドネシアから輸入されています。
特性
サゴヤシでんぷんのでんぷん粒の粒径は 10~65 µm(平均 30µm)で、馬鈴薯でんぷんに次ぐ大きさです。
用途
輸入されたサゴでんぷんは、酸化、漂白され、酸化でんぷん(加工でんぷん)として、そば、うどん、ラーメンなどのめん類やシュウマイ、餃子の皮の打ち粉として利用されています。サゴでんぷんから作る酸化でんぷんは、糊化開始温度、粘度とも低く、老化しにくいという特徴があり、茹で汁に溶けだしにくいことから、めん類などの茹で汁の取り換え回数が少なくて済むというメリットがあります。
食用でんぷんの特性の比較


まとめ
- 食用でんぷんには、国内で使われているものだけでも、コーンスターチ、馬鈴薯でんぷん、甘藷でんぷん、小麦でんぷん、米でんぷん、タピオカでんぷん、サゴでんぷんなど、たくさんの種類があります。
- 馬鈴薯でん粉と甘藷でん粉の原料は 100 %国内産、コーンスターチ、タピオカでん粉、サゴでん粉の原料は 100 %外国産です。
- 食用でんぷんの特性はさまざまで、料理のとろみ付けには馬鈴薯でんぷんが適しています。
- 食用でんぷんの多くは、食品添加物(加工でんぷん)や甘味料の製造原料として使われています。また食感改良や保存性の向上のためにでんぷんを使った加工食品が多数あります。