パンやケーキ、めん類の原料として使える「米粉」が登場したのは、いまから 20数年前です。それ以前から、お米から作られる粉は広く使われていましたが、原料となるお米の種類(うるち米、もち米)や製造方法によって、違う名前で呼ばれていました。お米から作られるさまざまな粉について、原料、製造方法、用途を、解説します。
うるち米ともち米
コメは、トウモロコシ、小麦に次いで、多く栽培されている穀物です。日本で栽培されているのはジャポニカ種(短粒種)と呼ばれるものですが、生産量はインディカ種(長粒種)の方が多く、コメの生産量の 8 割を占めています。
日本で栽培されているお米の品種は 300 ほどありますが、まずは、うるち米ともち米に分けることができます。うるち米は、ふだんごはんとして食べているお米で、炊くと、透き通るような白色をしています。もち米はお餅、赤飯などに使われるおこめで、炊くと真っ白です。うるち米ともち米は、含まれているでんぷんの種類が違います。
でんぷんは、グルコース(ぶどう糖)が数千から数万個、つながってできています。そのつながり方によって、でんぷんはアミロースとアミロペクチンに分けることができます。アミロースはグルコースがほとんど一直線につながってできてるのに対し、アミロペクチンは一直線のグルコースの鎖の途中から、また別のグルコースの鎖がつながった、複雑な枝分かれ構造をしています。この枝分かれは、グルコース約 25 個に 1 回、枝分かれしています。

うるち米では、でんぷんのうち、アミロースが20%、アミロペクチンが80%であるのに対し、もち米ではほぼ100%がアミロペクチンです。
水を加えたときに、アミロースには粘り気がなく、アミロペクチンには強い粘り気が生じます。そのため、もち米の方がうるち米よりも、粘り気が強くなります。ちなみにタイ米(インディカ種)のでんぷんはほとんどがアミロースなので、日本のお米と比べると、粘り気がほとんどなく、パサパサです。
またアミロースは熱水に溶けますが、アミロペクチンは溶けません。そのため、ご飯を煮ておかゆを作ると、ごはんがふやけて柔らかくなりますが、お餅を煮てお雑煮にしても、お餅は溶けません。
お米の粉にも、うるち米から作るものと、もち米から作るものがあります。
うるち米から作られる粉の製造方法と用途
米粉
うるち米を精白(精米)、水洗いしたのち、乾燥させます。そのお米を ① 二段階製粉、② 酵素処理製粉、③ 湿式気流粉砕、④ 湿式胴搗き(しっしきどうつき)粉砕 などの技術で粉にします。これらの技術は、2000年以降に導入された新しい技術です。これらの技術の導入によって、粒径が小さく、でんぷん顆粒が壊れていない粉が作ることができるようになりました。
農林水産省は 2012 年 2 月に「新規用途米粉の用途別推奨指標」というものを公表しています 1)。新規用途米粉とは、ここで説明している米粉のことです。それによると、新規用途米粉とは、
- 粒度:粒径75μm以下の比率が概ね80%以上
- でんぷん損傷度:米粉製品の品質に大きく影響するため総じて低いほど望ましく、おおむね12%以下(米粉の配合割合の高い製品を製造するためには、おおむね6%以下が望ましい)
- 水分含有率:15%以下(米の農産物検査規格に準ずる)
とのことです。その 5 年後に農林水産省から、米粉の用途別基準・用途表記が、公表されてました 2)。そこには、粒径 75µm 以下の比率が50%以上で、でんぷんの損傷度が 10% 未満 を、米粉 1番・2番・3番 と表記するとされています。これはあくまでも、米粉 1番(菓子・料理用)、2番(パン用)、3番(麺用(一部、菓子・料理用を含む))と表記するための基準であり、例えば でんぷんの損傷度が 10% 以上のものを、米粉と表記してはいけない、といっているわけではありません。
一方、この文書の一番下に、小さな字で次のような書かれています。「上新粉など、既存用途向けの米穀粉は対象としない。」つまり、これから紹介するお米から作られたさまざまな粉とは、別物であるいうことです。この文書は農林水産省政策統括官名で出された公文書なのですが、結局、米粉の明確な定義はわかりませんでした。
米粉の用途別表記の詳細や、米粉の用途については、こちらをご覧ください。
パンやケーキ、めん類の原料として使える「米粉」が登場したのは、いまから 20数年前です。それ以前から、お米から作られる粉は広く使われていましたが、原料となるお米の種類(うるち米、もち米)や製造方法によって、違う名前で呼ばれていました。お米か[…]
上用粉、上新粉、並新粉
うるち米を精白(精米)、水洗、乾燥させます。そのお米をロール粉砕し、さらにふるい分けをして、粒子の大きさを揃えます。ロール粉砕というのは、二つのロールの間に原料を通すことで、機械的に米粒を壊す方法です。
粒子が小さい順に、上用粉、上新粉、並新粉と呼ばれます。上新粉の粒径は、13~24 µmです 3)。
上用粉は、上用まんじゅうや浮島などの和菓子の原料として使わます。上用粉を使った和菓子は、口当たりがなめらかであるといわれます。
上新粉は、この 3 つの中ではもっとも一般的な粉で、柏餅、草餅、団子、ういろうなど、さまざまな和菓子の原料として使われます。
並新粉は、上新粉をふるい分けた後に残った粉で、団子や餅菓子に使われますが、あまり流通していないとのことです。固くてザラザラした食感が特徴です。
米粉も、上新粉(上用粉・並新粉)も、うるち米を精白・水洗・乾燥してから粉砕して作りますが、粉砕方法の違いによって、粒度とでんぷんの損傷度が大きく異なります。

みじん粉
うるち米から作られるお米の粉には、みじん粉と呼ばれるものもあります。みじん粉は、うるち米を炊飯して得られたごはんを乾燥し、それをロール粉砕して作ります。和菓子の原料として使われるそうです。
なお、同じ呼び方の「微塵粉」「味甚粉」は、原料がもち米の、全く別物です。
もち米から作られる粉の製造方法と用途
白玉粉
精白したもち米を洗って水に浸し、水を加えながら細かく粉砕し、水中に沈殿したものを乾燥して作ります。このように水を加えて粉をつくる方法を、湿式製粉法といいます。白玉粉の粒径は、5~9 µmです 3)。
白玉粉は、白玉団子や大福餅の原料として使われます。
もち粉
精白し洗ったもち米を乾燥させ、乾燥した状態でロール粉砕し、さらにふるい分けをして、粒子に大きさを揃えます。もち粉の粒径は、13~24 µm です 3)。もち粉は、求肥、大福餅の原料となります。
微塵粉(=味甚粉)
もち米を蒸して餅を作り、煎餅状に平たく延ばし、乾燥したものをロール粉砕して作ります。和菓子つなぎや落雁の原料として使われます。
上南粉(=極微塵粉)
蒸したもち米を乾燥させ、ロール粉砕してできた粉を煎って作ります。こちらも和菓子の原料となります。
落雁粉
- 蒸したもち米を乾燥させ、ロール粉砕してできた粉を焦げないように白煎りして作ります。和菓子、落雁の原料として使われます。
寒梅粉(=焼微塵粉)
もち米を蒸して餅を作り、煎餅状に平たく延ばし、焼き色が付かない程度に軽く焼いて、乾燥したものをロール粉砕して作ります。押菓子、豆菓子、製菓用のほか、重湯、糊の原料にもなります。
米粉の製粉技術
米粉はでん粉の顆粒を壊さずに細かい粉にするために、新しい技術で作られています。白玉粉やもち粉は洗ったお米を乾燥させて、ローラーで粉砕していました。でもこの方法では、粒径が小さくならず、でんぷん顆粒が壊れてしまいます。米粉を作るための新しい技術をいくつか紹介します 4)。
二段階製粉
お米は外周部が固いため、ローラー製粉で粉にすると粗くなります。二段階製粉ではお米を洗った後に圧偏ロール粉砕機を通し、固いお米の回りに小さなヒビを入れます。そのあと、お米の粒を高速の気流に乗せて鋼板に当てることで粉砕する(気流粉砕といいます)方法です。この方法で粉砕された米粉は、でんぷんの損傷が少なく、細かくなっているとのことです。なおこの技術は新潟県が開発したものです。(図の出典は4))

酵素製粉
お米は細胞組織で形成される構造体であるため、お米を酵素液に漬けることで、酵素を用いて細胞組織を分解し、お米の内部を粉質化します。脱水したのち、お米の粒を高速の気流に乗せて鋼板に当てることで粉砕しますが、内部が粉質化しているため、でんぷんの損傷を低く抑えつつ、微細にすることが可能です。この技術も新潟県が開発したものです。(図の出典は4))

湿式気流粉砕
お米を15~45分間水につけて柔らかくしたのち、水分量を一定にし、お米の粒を高速の気流に乗せて鋼板に衝突させて粉砕する方法です。西村機械製作所の気流粉砕機「スーパーパウダーミル」を使ってお米をこの方法で粉砕すると、粒径の平均が30µm、分布が10~100µmであったという結果が、ウェブサイトに掲載されてます 5)。また米粉の電子顕微鏡写真も掲載されていますが、米粉の形が尖っておらず、でんぷんも損傷を受けずに丸みを帯びています。この方法は、次に説明する湿式胴搗き(しっしきどうつき)粉砕法より、粒径が揃った米粉が得られるそうです。またでんぷんの損傷度は 5% 程度にとどまっています。
湿式胴搗き(しっしきどうつき)粉砕
お米と水を石うすに入れ、杵ですり潰して得られたものを乾燥して粉にします。西村機械製作所の胴搗き粉砕機「スタンプミル」を使ってお米を粉砕した結果が、ウェブサイトに掲載されています 5)。それによると、粒径の平均が 30µm、分布が 5~150µm となっています。湿式気流粉砕法よりも粒径のばらつきは大きいですが、でんぷんの損傷は少なく、丸みを帯びたでんぷんの顆粒が米粉の表面に露出した電子顕微鏡写真が掲載されています。
まとめ
お米から作られる粉はいろいろありますが、原料と製造方法が異なります。
うるち米から作られるのが、米粉、上新粉、上用粉、並新粉、みじん粉(微塵粉は違います)、もち米から作られるのが、白玉粉、もち粉、微塵粉(=味甚粉)、上南粉(=極微塵粉)、落雁粉、寒梅粉(=焼微塵粉)です。またこのうち、お米を炊飯あるいは蒸してから粉にしているのは、みじん粉、微塵粉(=味甚粉)、上南粉(=極微塵粉)、落雁粉、寒梅粉(=焼微塵粉)になります。
米粉と上新粉はいずれもうるち米を粉にしたものですが、違いは粉の細かさとでんぷんの損傷度です。最近よく売られるようになった米粉は、パン、めん、ケーキなど、従来小麦粉から作られていた用途に使えることをウリにしています。そのため、上新粉よりも粉の粒が小さく、でんぷんが傷つかない方法で製粉されています。
参考文献
1) 米粉の用途別基準と新規用途米粉の用途別推奨指標について、新潟県、平成 24 年 2 月
https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/syokuhin/1330290118847.html
注)もとの農林水産省のページは削除されていたので、新潟県のホームページにリンクを貼っています
2) 『米粉の用途別基準』及び『米粉製品の普及のための表示に関するガイドライン』の公表について、農林水産省政策統括官、平成29年3月29日
3) 斎藤寛子ら、ボン・デ・ケージョの性状に及ぼす各種粉の影響、山形県立米沢女子短期大学紀要、(43) 83-90 (2007)
4) 新潟県が誇る!米粉製粉技術の御紹介、新潟県
https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/syokuhin/1356835483235.html
5) 米粉.jp(株式会社西村機械製作所)ホームページ
http://www.rice-flour.jp/flow/wet.html
