植物性原料から作られたミルクがブームです。豆乳、オーツミルク、アーモンドミルクのほかに、カシューミルク、マカダミアミルク、ヘーゼルナッツミルク、ココナッツミルク、ライスミルクといった新しい植物性ミルクが次々と登場しています。原料や作り方、成分の違いと、栄養学的観点から飲むメリットがあるのかどうかを、解説します。
植物性ミルクはなぜ必要
豆乳は大豆から、アーモンドミルクはアーモンドから、マカダミアミルクはマカダミアナッツから、オーツミルクはオーツ麦という穀物から、主な成分を抽出した液体で、植物性ミルクと呼ばれます。豆乳は第二のミルク、アーモンドミルク、マカダミアミルク、オーツミルクは第三のミルクと呼ばれることもあります。スーパーへ行けば簡単に手に入りますが、鍋とミキサーがあれば、ご家庭でも作ることができます。
日本で豆乳が発売されたのは 1978 年のことで、それから何回かブームがありました。流行のきっかけとなったのは、健康ブーム、ダイエットブームです。牛乳よりも何かしら体によいイメージが浸透し、現在も売れ続けています。その後、2013年にアーモンドミルクが、2020 年にマカダミアミルクとオーツミルクが発売され、2021 年に入ってから、複数の会社がオーツミルクの新製品を発売しています。
牛乳に代わる植物性ミルクは、国内でも海外でも人気です。その理由は次の 3 つです。
乳アレルギーと乳糖不耐症
乳製品にアレルギー反応を示す人の数は増加傾向にあります。この人たちは、牛乳や乳製品を摂ることができないため、その代替品として豆乳などの植物性ミルクや、ソイチーズといった乳製品の代替品を必要としています。また世界の人口の 75 %は、牛乳に含まれる乳糖を分解することができない、乳糖不耐症です。牛乳を飲むと下痢や腹痛が起きる人たちにとって、植物性ミルクは牛乳の代替品として重宝されています。
畜産における温室効果ガスの排出と動物倫理
最近、国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標、Sustainable Development Goals)について、耳にする機会が増えました。肉や乳製品を生産するためには、同じ栄養価の穀物を生産するために必要な量を上回る土地と水資源が必要で、しかも大量の温室効果ガスを排出していることがクローズアップされています。地球環境への負荷を減らすために、肉や乳製品の消費を減らし、植物由来の食品で代替する動きが広がっています。
また畜産業では、人間が消費するための肉、乳製品や毛皮を効率よく生産するために、多くの動物が身動きが取れない劣悪な環境で飼育されています。このような動物の飼育環境について、倫理的な観点から疑問を持つ人が増えており、このような環境で生産された製品を避け、植物由来の製品を選ぶ動きがあります。例えば 1998 ~2018 年の間にベジタリアン(菜食主義者)の数は、北米・中南米では年平均3.9%、ヨーロッパでは2.6%増加しました 1)。
食習慣や食に対する考え方の違い
何を食べて、何を食べないかは、人によって考え方が違います。世界の人口の半分以上の 40 億人がベジタリアン(菜食主義者)といわれており 2)、その中でも、ビーガン、オボベジタリアン、マクロビオティックの人たちは、肉も乳製品も食べません。また世界の人口の 3 %が、植物性食品と魚介類は食べるが、肉、乳製品、卵などの動物性食品は食べないペスカタリアンです 3)。これらの人にとって、牛乳に代わる植物性ミルクは、安心して食べることができる食材の一つとなっています。
植物性ミルク10種類の原料・成分
豆乳(ソイミルク)
植物性ミルクの中で、もっとも一般的なのが、豆乳です。豆乳は一晩水に浸した大豆をすりつぶし、さらに水を加えて煮つめた汁を、布で漉して作ります。豆乳ににがりを加えて固めると豆腐になるので、味は豆腐と似ています。昔の豆乳には、大豆特有の青臭さがありましたが、青臭い成分を発生させるもとになる酵素を熱処理で失活させることで、青臭くない豆乳を作ることができるようになりました。そのまま飲んだり、牛乳の代わりに料理や製菓用に使われます。
豆乳はたんぱく質、脂質をバランスよく含んでおり、牛乳に代わるたんぱく源として優れた飲み物です。
たんぱく質はアミノ酸がつながってできています。アミノ酸の中には人間の体内で合成ができないため、食物として摂らなければならないものが9種類あり、これを必須アミノ酸といいます。この必須アミノ酸がバランスよく含まれているたんぱく質ほど、良質なたんぱく質といえますが、これを評価する指標がアミノ酸スコアです。4 種類のミルクのアミノ酸スコアは、次の通りです。
- 豆乳 100
- アーモンドミルク 78
- オーツミルク 100
- 牛乳 100
牛乳に含まれる乳糖は分解されにくく、特に大人になると、乳糖を分解する酵素であるラクターゼが減少するので、牛乳を飲んでお腹がゴロゴロする人も多いと思います。そのような人にとっては、うってつけの飲み物です。
しかし、豆乳には牛乳に含まれるカルシウムがそれほど多く含まれていません。豆乳の原料である大豆はカルシウムを多く含む食品なのですが、豆乳を作る過程でカルシウムの多くはおからとして取り除かれてしまいます。牛乳の代わりに豆乳を飲む人は、ヨーグルト、チーズ、小魚や他の大豆製品からカルシウムを意識的に摂るようにすればよいと思います。

オーツミルク
オーツ麦(燕麦)を皮ごとローラーでつぶし、水を加えて煮て、粥状にします。これをさらにすりつぶし、アミラーゼという酵素を加えてでんぷんを分解したのち、固形分を取り除き、最後に 90 ℃で加熱することで酵素を失活させ、完成させます。
やや甘く、低脂肪ミルクに似た食感があります。炭水化物が多く、たんぱく質は牛乳の1/3程度しかありません。また脂質、カルシウムはわずかしか含まれません。飲用、料理、製菓用。
オーツミルクには栄養的に摂る価値はありません。市販のオーツミルク(飲料)は、オーツミルクに食物繊維やオーツ麦粉、食塩、ビタミン、食用油脂、増粘剤、安定剤などを添加して栄養分と味を調整しています。

アーモンドミルク
素焼きのアーモンドを 1~2 日間水につけて吸水させたのちすりつぶすと、アーモンドに含まれるさまざまな成分が水に溶け出してきて、水が乳白色になります。これをろ過して液体部分だけを集めたものが、アーモンドミルクです。ナッツのような香ばしい味がして、低カロリー、低たんぱくです。カルシウムは多いですが、他の栄養素は少ししか含まれません。飲用、製菓用として使われます。
ただ、飲料水として販売されているものは、上記の方法で作ったアーモンドミルクに、糖類、食物繊維、植物油脂、ビタミンE、カルシウムなどを添加して、栄養分と味を調整しています。これらはアーモンドミルクを作る過程でろ過した際に、取り除かれたものです。わざわざ後で添加するくらいなら、アーモンドをそのまま食べたほうが、食品添加物を摂らなくて済みます。
アーモンドミルクは、牛乳、豆乳、オーツミルクに比べて、低カロリーです。低カロリーなのは、低カロリーになるように作っているからです。アーモンドミルクは、牛乳、豆乳、オーツミルクに比べて低カロリーで、ダイエットに最適、という記事をよく見かけますが、水で薄めれば、カロリーはいくらでも下げられます。
また、「カロリーが低い製品」=「体によい製品」というイメージがありますが、これは全くの誤解です。
カシューミルク
カシューナッツが原料の植物性ミルクで、作り方はアーモンドミルクと同じです。ナッツのような香ばしい味があり、低カロリー、低たんぱくで、栄養素が少ないという特徴があります。
料理用や製菓用に用いられる。またコーヒーに加えてラテにすることで、味に厚みを加えることができます(脂肪分が多いため)。飲むメリットはなく、カシューナッツをそのまま食べるほうがよいと思います。
マカダミアミルク
マカダミアナッツが原料の植物性ミルクで、作り方はアーモンドミルクやカシューミルクと同じです。ナッツのような香ばしい味で、低カロリー、低たんぱく、栄養素が少ない点も、カシューミルクと同じです。これも飲用ではなく、デザートやコーヒーへの添加用に使われます。

ヘーゼルナッツミルク
ヘーゼルナッツが原料の植物性ミルクで、作り方はアーモンドミルクやカシューミルクと同じです。ナッツのような香ばしい味で、低カロリー、低たんぱく、栄養素が少ない点も、カシューミルクと同じです。これも飲用ではなく、製菓用またはコーヒーへの添加に使われます。
ココナッツミルク
原料は、ココナッツの種子の胚乳です。ココナッツの種子の胚乳(固体)をすりおろし、水またはココナッツジュースと一緒に弱火で煮込んでから裏ごしし、目の粗い布で搾ることで作ります。クリーミーで、ほのかな甘さと独特の香りがあります。高カロリー(牛乳の2.5倍)、高脂質、低カルシウムで、料理やお菓子に使われます。特に東南アジアやインド、南アメリカの料理ではよく使われるようです。そのまま飲むこともあります。
ココナッツミルクはたんぱく質もカルシウムも少ない一方で、脂質が多くカロリーが高いので、牛乳の代わりにはなりません。

ライスミルク
炊いたお米を裏ごししてさらに煮たのち、布で漉したものです。お粥のような味です。成分はほとんどが炭水化物で、たんぱく質、カルシウムは少量しか含まれていません。またカロリーは牛乳より少し低い程度で、低カロリーではありません。飲用です。
わざわざ買ったり作ったりする価値はゼロです。ご飯を食べたほうがよいでしょう。見た目が牛乳に似ているだけで、たんぱく質もカルシウムも含まれていません。麹を加えて甘酒風にしたものもありますが、甘酒を飲むことをお勧めします。
ヘンプミルク
ヘンプ(麻)の種子(ヘンプシード)が原料です。皮をむいたヘンプシードに水を加え、ミキサーで粉砕した後、布で漉したもので、ナッツのような香ばしい味です。炭水化物とたんぱく質は少なく脂肪が多い。特にαリノレン酸(ω3脂肪酸の一種)を多く含むのが特徴で、料理、製菓用に使われるほか、シリアルにかけることもあります。
市販のヘンプミルクは、植物油脂やでんぷんを加えて、栄養分や味を調整しています。ω3脂肪酸が多く含まれることがウリですが、ω3脂肪酸を摂るのが目的なら、くるみの方が効果的です。
スペルトミルク
現在栽培されている小麦(パンコムギ)の祖先にあたるスペルト小麦が原料です。スペルト小麦の全粒粉に水を加え、加熱した後、布で漉してつくります。ほとんど味はありません。炭水化物がほとんどで、若干のたんぱく質とミネラル、食物繊維が含まれます。飲用ですが、小麦粉を水に溶いたようなもので、わざわざ飲む価値はありません。スペルト小麦は品種改良されていないので健康によいというイメージが定着していますが、栄養的には普通小麦とほとんど変わりません。また市販のスペルトミルクは、植物油脂を添加して、栄養分や味を調整しているものがほとんどです。
飲むメリットのある植物性ミルク
豆乳
ズバリ、飲むメリットのある植物性ミルクは、豆乳だけです。豆乳には牛乳とほぼ同じ量のたんぱく質が含まれています。また豆乳のたんぱく質には、人間が食物から摂らなければならないすべてのアミノ酸をバランスよく含んでいます。さらに豆乳に含まれるたんぱく質は、牛乳に含まれるたんぱく質よりも、消化・吸収がよいので、わざわざプロテインを飲まなくても、手軽に良質なたんぱく質を摂ることができます。
大豆にはカルシウムも含まれていますが、豆乳を作る際に、食物繊維と一緒に搾りかす(おから)に残ってしまいます。牛乳の代わりに豆乳を飲む場合は、カルシウムを別の食品から摂るようにしましょう。豆乳は簡単に手に入り、値段も安いので、お勧めです。
飲むメリットのない植物性ミルクとその理由
ナッツが原料の植物性ミルク
アーモンドミルクがブームになっていますが、飲む前に栄養成分表示や原材料表示を見てください。アーモンドミルクは低カロリーです。言い換えれば、大したものが入っておらず、水に近いということです。また、さまざまな成分を後から添加して、味、香り、栄養分を調整しており、食品添加物も使われています。これなら、アーモンドをそのまま食べたほうが食物繊維が摂れるうえ、余分な食品添加物を摂らなくて済みます。
市販のアーモンドミルクの原材料欄は、次のとおりです。(「/」以降は食品添加物)
グリコ アーモンド効果<砂糖不使用>
アーモンドペースト(国内製造)、食物繊維(イヌリン)、食塩、アーモンドオイル加工品/pH調整剤、セルロース、クエン酸Ca、乳化剤、香料、増粘剤(キサンタンガム)、ビタミンE、(一部にアーモンドを含む)
マルサンアイ 毎日おいしいローストアーモンドミルク 砂糖不使用
アーモンドペースト(国内製造)、食物繊維(ポリデキストロース)、食塩、植物油脂/乳化剤、香料、pH調整剤、安定剤(ジェラン)、ビタミンE
ポッカサッポロフード&ビバレッジ アーモンド・ブリーズ 砂糖不使用
アーモンドペースト(アメリカ製造)、デキストリン、植物油脂、食塩/リン酸Ca、クエン酸K、乳化剤、安定剤(ジェラン)、セルロース、ビタミンE、(一部にアーモンドを含む)
これを見て気づいたことを挙げますと、
- 植物油脂が添加されている(グリコはアーモンドオイルだが、他社は何の油か不明)。
- グリコとポッカサッポロはカルシウムを添加している。
- ビタミンEを添加している。
- 食物繊維が添加されている。
アーモンドはカルシウム、ビタミンE、食物繊維を多く含んでいるので、これをそのまま食べればよいでしょう。
アーモンドミルク 200 ml に相当するのはだいたい5粒程度(50~60 g)で、アーモンドの素焼きの価格にすれば75~100 円と、アーモンドミルクとほとんど同じです。アーモンドはカロリーが高いので、1日 25粒 を限度に食べてください。またアーモンドが原因の食物アレルギーが増えているので、毎日食べ続けることのないようにしてください。特に花粉症の人は要注意です。
他のナッツが原料のミルクも同様です。コーヒーに加えてラテにする場合は、液体でなければならないので、アーモンドミルクやカシュミルクは重宝しますが、そのまま飲むのであれば、ナッツをそのまま食べるほうが、間違いなく効果的です。

穀物が原料の植物性ミルク
オーツミルク、ライスミルク、スペルトミルクは、それぞれオーツ麦、米、スペルト小麦を煮てから水に溶かしたもので、炭水化物が主成分です。例えていうならば、小麦粉を水に溶かしたようなもので、栄養価は低く、飲むメリットは全くありません。これはアレルギーなどで牛乳も豆乳が飲めない人が、牛乳のような感覚で飲むための飲料水と考えてください。
牛乳を飲むメリットは、たんぱく質とカルシウムが摂れることですが、穀物が原料のミルクには、たんぱく質もカルシウムもほとんど含まれていません。飲料水として販売されているものには、カルシウムや植物油脂が添加されている場合もありますが、別の食品から摂ったほうが効率的です。水にはカルシウムや植物油脂は均一に混ざらないので、安定剤や増粘剤などの食品添加物まで必要になります。
市販のオーツミルクの原材料欄は、次のとおりです。(「/」以降は食品添加物)
alpro オーツミルク 砂糖不使用
オーツ麦 (えん麦)、食物繊維、ひまわり油、食塩/炭酸カルシウム、増粘剤(ジェランガム)、ビタミンB2、ビタミンD2、ビタミンB12
マルサンアイ オーツミルク
オーツ麦糖化液(国内製造)、オーツ麦粉、食塩/安定剤(増粘多糖類)、pH調整剤、香料
コカ・コーラ GO:GOOD おいしいオーツ麦ミルク なめらかプレーン
オーツ麦濃縮液(国内製造)、オーツエキスパウダー、ひまわり油、食物繊維(イヌリン)、食塩/乳化剤、リン酸塩(K、Ca)、安定剤(ジェランガム)
オーツミルクは牛乳よりカロリーが低いため、ダイエットに最適などと書いているサイトもありますが、
- たんぱく質、脂質が少なく、ひまわり油を添加している商品もある。
- 食物繊維、オーツ麦粉が添加されている。
- 食塩が添加されている。
- 増粘剤、安定剤が使われている。
ことからも、わざわざ飲むべき理由が見当たらないというのが、正直なところです。
まとめ
豆乳は大豆から、アーモンドミルクはアーモンドから、マカダミアミルクはマカダミアナッツから、オーツミルクはオーツ麦という穀物から、たんぱく質や脂質、糖質といった成分を抽出した液体で、「植物性ミルク」と呼ばれるものです。豆乳は「第二のミルク」、アーモンドミルク、マカダミアミルク、オーツミルクは「第三のミルク」とも呼ばれています。
豆乳は良質なたんぱく質と脂質も多く含まれますが、カルシウムはあまり含まれていません。
市販のアーモンドミルクは合成品で、食物繊維、植物油脂、カルシウム、ビタミンEが添加されていることが多いです。アーモンドミルクを、カルシウムビタミンEと摂るためのサプリメントとして考えるなら、摂取するメリットはあるかもしれませんが、食塩、植物油脂、食品添加物など、摂りたくないものまで摂ることになります。
オーツミルクには炭水化物が多く含まれる一方で、特に見るべき栄養成分は含まれていません。オーツミルクには摂取するメリットはありません。
参考文献
1) 市川拓也、なぜ今、ヴィーガン(ベジタリアン)なのか ~重要な示唆は価値観の変化による行動変化~、大和総研 (2021)
https://www.dir.co.jp/report/research/economics/japan/20210203_022067.pdf
2) Devrim-Lanpir A, Hill L, Knechtle B. Efficacy of Popular Diets Applied by Endurance Athletes on Sports Performance: Beneficial or Detrimental? A Narrative Review. Nutrients. 2021;13(2):491. Published 2021 Feb 2. doi:10.3390/nu13020491
3) An exploration into diets around the world, Ipsos MORI (2018)
https://www.ipsos.com/sites/default/files/ct/news/documents/2018-09/an_exploration_into_diets_around_the_world.pdf